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DA PUMP

2018年の「NHK紅白歌合戦」をダンサーに注目して振り返ってみた!

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ここ数年の音楽シーンは、ダンスが注目されている。2017年は登美丘高校ダンス部のバブリーダンス、2018年はDA PUMPの「U.S.A」が社会現象となり、ダンスで日本を明るくしたといっていい。その中で一年の締めくくりとして放送された紅白歌合戦。今年は、例年以上にダンスがフィーチャーされていたように思う。アーティストとバックダンサーという関係ではなく、アーティストと同列でダンサーがスポットライトを浴びる場になっていた。そんな「NHK紅白歌合戦」を、ダンサーに注目して振り返りたい。

日本の良さをダンスで見せる天才たち Fabulous Sistersと梅棒

ランニングマンで世間を賑わせた、三代目 J Soul Brothersが「R.Y.U.S.E.I.」で白組の先陣を切ると、赤組は坂本冬美の「夜桜お七」で華やかなスタートを飾る。この「夜桜お七」を坂本冬美と一緒にダンスで作り上げたのが、世界大会"WORLD OF DANCE"で2連覇を果たし、世界一に輝いたRuu率いるFabulous Sisters。Ruuが作る楽曲の世界観をシリアスに表現した振付、厳しい選抜を勝ち抜いたダンサーによるキレと高いシンクロ率を備えたダンスが、圧倒的な「夜桜お七」を繰り広げた。



ラストのサビでは、男子新体操アスリートのメンバーによるBLUE TOKYOのアクロバットも加わり、桜吹雪のような激しい世界観を生み出す。Fabulous SistersとBLUE TOKYOによるリフトの共演もあり、豪華すぎるパフォーマンスになっていた。



続く、白組の郷ひろみ「GOLDFINGER'99~GO!GO!2018~」では、梅棒と愉快な仲間たちが登場。梅棒といえば、J-POPで踊る男のJAZZダンス集団で知られ、毎年開催しているJ-POPを使ったセリフのないダンス公演は高評価を受けている。いわば日本で一番J-POPとダンスで誰もがわかるパフォーマンスを届けられる存在なのだ。



今回は梅棒メンバーに加えて、彼らのダンス公演に出演経験があるダンサーたちが愉快な仲間たちとして登場。郷ひろみが、NHKホールのエントランスからステージに向かって歌いながら移動する道中で、平昌オリンピック、カメラを止めるな!、TikTok女子高生、金足農業野球部、WCサッカー日本代表と、2018年に起きた出来事をダンサーが演じていくという演出を披露。これほど年末にふさわしいパフォーマンスはないだろう。

ラストのステージで、郷ひろみをセンターに全員でパフォーマンスする姿は、オールスター感満載!ダンスの楽しさをわかりやすく打ち出していた。

日本が世界に誇るアーティストとダンサーたち DA PUMPと三浦大知

2018年の音楽シーンの主役といえば、DA PUMPだ。「U.S.A」が YouTubeで1億回再生され、いいねダンスは瞬く間に日本中の老若男女に広まった。もちろん「U.S.A」のパフォーマンスも盛り上がったのだが、ここで注目したいのはメンバーのTOMOとKENZOが振付した、五木ひろしの「VIVA・LA・VIDA!~生きてるっていいね!~」だ。



サビの「いいね」のフレーズが印象的な楽曲と、いいねダンスで話題を呼んだDA PUMPが、まさかコラボレーション。そして、DA PUMPがバックダンサーとして踊るという豪華さ!

7人の息ぴったりなLOCKダンスや歌謡曲に合わせた振付など、世界で活躍するダンサーもメンバーにいるなか、非常にレアなコラボレーションだった。ラストはAKB48、Aqours、TWICEのメンバーもバックダンサーに加わるという驚きの展開に。

演歌界の大御所、国民的アイドル、アニメとのメディアミックス、K-POP、今年の顔とも呼べるDA PUMPが一挙に揃い、演歌・歌謡曲を踊るなんてこの先二度とない光景だろう。



打って変わってISSAの弟分でもある三浦大知は、30人のバックダンサーを従えて「Be Myself」を披露。テレビでは、PURI、Shingo Okamoto、Miu Ide、Akanenの4人でのパフォーマンスが多かったが、紅白ではこの4人に加えて、今のコレオ系ダンスシーンのメインストリームにいるダンサーたちが大集結。



五木ひろしのバックダンサーが芸能人的豪華さだとしたら、三浦大知のバックダンサーはダンス的豪華さと言えるだろう。三浦大知も難しいと認める「Be Myself」に加えて、アルバム『球体』に収録されている「飛行船」の激しいダンスムーブを、30人で一糸乱れぬシンクロ率で踊るシーンは圧巻だった。

コレオグラファーがいるから音楽がより華やかになる

バックダンサーだけがダンサーの仕事ではない。アーティストに振付をするコレオグラファーも重要だ。山内惠介「さらせ冬の嵐~刀剣男士コラボスペシャル~」を振付した本山新之助。AKB48、乃木坂46、欅坂46の「ひょっこりひょうたん島」を振付した西田一生。水森かおり「水に咲く花・支笏湖へ~イリュージョンスペシャル~」を振付したEBATO。丘みどり「鳰の湖」、欅坂46「ガラスを割れ」を振付したTAKAHIRO。

演出まで話を広げれば、Sexy Zone「カラクリだらけのテンダネス~2018紅白ver.~」は、空間やステージ上に映像を映し出す"プロジェクションマッピング"を駆使する近未来型エンタテイメント集団のSIRO-Aが担当。これらは一例であるが、それだけ多くのコレオグラファーが紅白歌合戦の振付や演出に関わっている。

特に、AKB48&BNK48、乃木坂46、欅坂46といった大所帯のグループを、紅白歌合戦という特別なステージで動かすのは中々の大仕事だ。特に乃木坂46と欅坂46は年々ダンスパフォーマンスが難しくなっているので、アイドルとはいえ見応えのあるパフォーマンスになっていた。



話を紅白歌合戦から前日に放送された"輝く!レコード大賞"にうつすが、レコード大賞を受賞した乃木坂46の「シンクロニシティ」は、コレオグラファーのSeishiroが振付している。

大所帯のメンバーに構成と振付をつけ、体や衣装を使った細部の動きに命を吹き込み、楽曲の世界観を作り上げる。これはダンスナンバーに似ている部分があるのではないだろうか。ダンスシーンの要素の一つであるダンスナンバーが、アーティストのパフォーマンスに反映されるというのも、ダンスが世間に浸透してきた成果なのかもしれない。

ダンスを純粋に楽しむ気持ち 学生ダンサーたちの活躍

プロダンサーだけでなく学生ダンサーも紅白歌合戦で勇姿を見せている。思い返せば、2017年は登美丘高校ダンス部のバブリーダンスが社会現象を呼び、2018年は高校ダンス部の大会や活動がメディアでも多く報道されるようになった。学生ダンサーという新たなダンスコンテンツが市民権を得た年と言えるだろう。

今回の紅白歌合戦では、Hey! Say! JUMPが「Ultra Music Power ~ Hey! Say! 紅白スペシャルver.~」で、男子だけのチアリーディングチームである早稲田大学男子チアリーディングSHOCKERSとコラボレーション。男ならではのパワフルさを生かしたBaskettossや2&Halfで、存在感のあるパフォーマンスを披露していた。



活動休止から復帰したいきものがかりは、メンバーの母校である神奈川県立厚木高等学校ダンスドリル部、神奈川県海老名高等学校ダンス部の総勢50名と、名曲「じょいふる」を披露。数多くのCMや舞台の振付、NEWSの振付や演出などで有名な振付稼業 air:man監修のもと、「じょいふる」の持つ、明るくパワーがみなぎるようなダンスで、ジョイでポップでハッピーな空間を作っていた。

プロダンサーとはまた違ったベクトルで、ダンスを楽しんでいる姿が学生ダンサーの醍醐味。この純粋とも言えるダンスは、全国のお茶の間に感動を届けていたに違いない。

才能の塊たちが見せる世界観 米津玄師と辻本知彦と菅原小春

今の日本の音楽シーンで一番聴かれているアーティストと呼んでいい米津玄師。紅白歌合戦の出演が急遽決まった際には大ニュースとして報道されたほどだ。彼の楽曲「Lemon」で踊るダンサーも多く、ダンサーにとっても注目するべきアーティストの一人だろう。

そんな米津玄師がプロデュースする小学生ユニット・foorinをご存知だろうか。

"〈NHK〉2020応援ソング プロジェクト"による応援ソングの「パプリカ」を歌い踊るユニットなのだが、実はこの振付に携わっているダンサーもすごいのだ。振付は、シルク・ドゥ・ソレイユにて初の日本人男性ダンサーとして起用された実績を持つ辻本知彦と、今の若手、中堅世代の中で一番知名度が高い実力派ダンサーの菅原小春が担当。



そうそうたるビッグーネームであるが、振付自体は歌詞に合わせた子供らしいピースフルなダンスで、真似しやすいものになっている。紅白歌合戦で披露した、そのはつらつとしたダンスで思わず笑顔になった方も多かっただろう。これがプロの技なのだ。ただ難しかったり、激しいダンスをやらせるだけがプロの振付ではない。見る人に何を感じてもらうか? ダンスを見て感情を揺さぶれるか? マニアックな見方であるが、そのプロのマインドがよく伝わり表現されていたパフォーマンスだった。



そして、このコンビはこれだけでは終わらない。今度は、米津玄師の「Lemon」の歌披露で、辻本知彦の振付を菅原小春が踊る。表情、体の見せ方、爆発する感情、そのすべてに圧倒的な存在感があり、改めて菅原小春の唯一無二のダンスに引き込まれた方も多いだろう。もはやどこまでが振付で、どこからが菅原小春のダンスなのかわからないくらい、人間の感情の奥底に入り込んだダンスだった。

最高の音楽は、歌、踊り、音から生まれる STEZO、TAKUYA、YOSHIE

最後に紹介したいのはMISIAとSTEZO、TAKUYA、YOSHIEの4人だ。

当初、MISIAは「アイノカタチ 2018」のみ披露すると発表されていたが、本番ではサプライズでデビュー曲の「つつみ込むように・・・」も披露。MISIAの人間離れした高音フェイクの後に、MISIAのダンサーとして活躍していた、STEZO(MO PARADISE)、TAKUYA(Soul 2 Soul)、YOSHIE(BE BOP CREW)の3人が登場。



STEZO、TAKUYAは、MISIAのデビュー当時からのオリジナルダンサーであり、YOSHIEも過去にMISIAのダンサーを経験し、昨年開催されたMISIAのデビュー20周年ライブで振付とダンサー出演をした背景を持つ。

振付は、MISIAのオリジナルダンサーであるU-GEによるもの。まさにMISIAにまつわる同窓会のような豪華な並びに興奮したファンも多かったのではないだろうか。同じ振付なのに3人とも違うダンスに見えるのは、彼らがこの20年で歩んできたダンス人生によるものだろう。一人として同じダンサーはいないのだ。

最高の歌手、最高のバンド、最高のダンサーたちによる一体感は、ソロアーティストのMISIAではなく、MISIAという一つの音楽作品を見ているかのよう。歌のエンディングで、最高の音楽を浴びて踊り狂う3人の姿は、胸がグッとなるようなエモさがあった。

振り返れば、さまざまな形でダンサーが関わっていた紅白歌合戦。この濃さだけでもダンスシーンのわずか一部なのだから、やはりダンサーというのは奥が深い存在だ。楽曲中にテロップでダンサーとコレオグラファーが紹介されたのも番組側のリスペクトを感じた。これはダンサーがアーティストと同列で語られ、肩を並べる時代が来たということではないだろうか。ダンスシーンにとって未来に繋がる紅白歌合戦だった。